私が客員研究員を務めさせていただいているリクルートマネジメントソリューションズの組織行動研究所のウェブサイトで、3ヶ月に一度のペースで連載をさせていただいている。アカデミックな知識をビジネスパーソンに発信する活動の一環として、毎回テーマを決めて国際経営の研究成果をもとに執筆している。

今回の記事は、国際経営における「距離」について書いてみた。

「遠くの親類より近くの他人」は正しいか?~国際経営における距離

距離、というと物理的に近いか近いかを想像するが、それだけではなくて文化の違いや制度の違い、経済発展の度合い、さらに言えば言葉が同じかどうかなど、様々な次元で「距離」を考えることができる。変わったところでは旧宗主国ー植民地関係というのも、距離を縮める要因になる(詳しくは記事をご覧いただきたい)。総じて、距離が離れているほどビジネスは難しくなる、というのがこれまでの通説だ。

この「距離」という概念は、昨今、時折日本企業でも聞かれる、本社機能の海外移転にも関わってくるように思われる。

例えば日立の鉄道事業の本社機能の一部はイギリスにある。

この意義について、日立レールヨーロッパ社の光富氏は、イギリスに来たことで、イギリスの旧植民地に張り巡らされた人脈ネットワークで情報の質や量が変わった、と述べている。そして、そのことが、海外の鉄道市場を攻略するにあたっての優位だと見なしている。

これを「距離」という観点でとらえなおすと、意思決定の拠点を日本からイギリスに移すことで、様々な国からの「距離」が短くなった、と捉えることができる。

もちろん、本社機能の移転に関しては税制や産業集積など様々な要素が絡む、より複雑な意思決定ではあるのだが、光富氏のお話からは、「距離」も無視できない要素だ、ということがうかがえる。

我々日本人はついつい日本がハブである、という前提でビジネスを考えがちだが、グローバルなビジネスの中でどこに意思決定をする拠点をおくと「距離」という観点で有利なのか、というのを考えてみるのも重要かもしれない。

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