トランプ政権の減税案を国際ビジネスの観点で考えると、実はすごいのでは。

トランプ政権からかなり大胆な減税策が出ましたね。

米大統領は「レパトリ税」10%提案へ、パススルー減税も-当局者

Newspicksでもそれなりにコメントが盛り上がってます。173pickですからそこそこ注目を集めたニュースと言っていいかと思います。

もちろん、詳細がどうなるか、これが議会を通過するか、については未知数なわけで、現状で実際にどうなるか、確たることはなかなか言えません。ただ、これがなんなのか、ということを考えておくことは重要です。Newspicksのコメントでも書いたんですが、これは国際ビジネスの観点から意味を捉えると、かなりのインパクトがある政策であるように思われるのです。単に企業の税負担が減る、と言う話ではないのです。

国際経営のファイナンス面は僕は専門ではありませんが、僕の目から見て考えられることをこの機会にまとめておこうと思います。

端的に言えば、アメリカのグローバル企業(と、アメリカに金融面での統括拠点を持つ企業)にとっては経営上の自由度が大幅に上がる、と言うことだと考えられます。

いろいろ興味深い内容があるのですが、特に興味深いのはリパトリエーション税(他国で企業が上げた利益をアメリカに持ち込む際にかかる税金)の大幅減税(35%→10%)です。

多国籍企業の経営者の視点から見て、これが何を意味するのかというと、利益をグローバルに再投資しやすくなる、ということです。海外拠点で上がった利益をアメリカに持っていく際にとられる税金が大幅に減ることで、これまでだったら課税を避けるために海外拠点に留保していた利益を本社に移して、他の拠点に再投資したり、本社での活動に投資したりできるわけです。いわゆる、事業ポートフォリオ管理の観点から考えると、機動的に、アメリカをハブにして現在利益が上がっている拠点からこれから投資が必要な拠点に資源を移転できるのは、国際経営上、明らかにメリットがあると思われます。

Newspicksのコメントでは10%も取られるんだったら借金したほうが安いという話がありましたが、資金を有効に使っているか、と言う点で株主の厳しい評価を受けるアメリカの経営者はそういう発想はしにくいのではないでしょうか。手元現金を余らせていると、あっという間に自社株買いで株主に還元しろ、と言うプレッシャーが上がってくる環境のようですし。

さらに、財政という観点で見ると、世界各国で上がった利益をアメリカをハブにして他国に再投資する、という動きが増えれば、アメリカは自国内で創出されたのではない利益が自国を通り抜けることに対して課税できることになるわけで、税率は下がっても、実質的に税収はそれほど減らないかもしれないですね。

これを、大幅に税率を下げる→税収が減る、と言うふうに考えるのは短絡過ぎます。

これまではアメリカをハブに使ってこなかった他国の多国籍企業もアメリカをハブにするかもしれないわけで。お金の流れ自体が変わりうることまで想定して評価する必要がある、それくらいのインパクトのある政策ではないかと思います。

また、記事にもある通りアメリカに動かした利益の一部は、アメリカ国内での研究開発投資とかにも使われるでしょう。結果、グローバルの財務を統括するためだったり、研究開発のための知識労働者の雇用にもプラスの影響があるかもしれないですね。

と、いうことで、グローバル化した企業活動を念頭に考えればとても賢い税制のように見えます。

逆に、他の国の観点からいえば、アメリカに本社(や統括拠点)をおく企業が利益を持ち出してしまう(ことで、自国の税収が減る)わけで、それを防ぐために、他の国も税制を変えるプレッシャーにさらされることになるかもしれませんね。

また、これまで金融のハブとして得をしてきた国も動かざるをえないでしょう。実際、シンガポールを拠点に国際経営のアドバイザリーをやっている友人によると、シンガポールは間違いなく対抗して動くでしょう、とのことですので、当面、国際的な資金の流れをめぐる税制は要注目、になりそうです。

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投稿者: 吉川克彦(Katsuhiko Yoshikawa)

国際人事・組織論に関する研究者、コンサルタント。PhD (Management, London School of Economics and Political Science)。2017年8月より、上海交通大学安泰経管学院にて、Assistant Professorに就任予定。 主な研究分野は組織論、人材マネジメント論、国際経営論。 Journal of World Businessに査読付き論文が掲載されたほか、Academy of International Business, Academy of Management, Association of Japanese Business Studiesなどの学会にて研究発表の実績あり。また、日本国内でダイバーシティマネジメントについての書籍を出版。また、人事関連の雑誌への寄稿、新聞への論考を掲載。主な研究実績についてはこちら。 コンサルタントとして、様々な業界の日本企業の人事・組織変革を支援。主なテーマは、企業理念の浸透、ダイバーシティマネジメント(女性活躍促進を含む)、人事諸制度の再構築、海外法人における人事体制の確立、次世代リーダー育成、採用戦略の立案など。 1998年にリクルートに入社。人材、組織に関する研究、コンサルティング、サービス開発に 従事。2013年に同社を退社。 1974年 兵庫県西宮市生まれ。京都大学経済学部卒。2011年にLondon School of Economics and Political Science にてMSc. Management, Organisations and Governance 優等修了(Distinction) および、PhD in Management (Organisational Behaviour and Employment Relations Track)を終了。 ご連絡はこちらまで。 katsuhiko78@gmail.com / k.yoshikawa@lse.ac.uk

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