いよいよアカデミックポストに就職です。これから中国の大学に勤めることになるので、その顛末をご紹介していこうと思います。たぶん続きそうなので、(その1)としてます。今回は、ビザのお話です。現在、ビザの取得にえらい手間がかかっておりまして、半分愚痴、半分は今後、同じようなことをする人のための参考のためにまとめておこうかと。

各論に入る前に、背景を少々ご紹介しておくと。先日博士課程が終了しまして、無事、経営学博士になりました(LSEの手続きのため、正式に学位証明がもらえるのはもう少し先ですが)。その後の進路としては、中国の上海交通大学の安泰経管学院(同大学のビジネススクール)にて、Assistant Professor(日本だと専任講師相当?)の就職が決まっておりまして、8月から中国で働きます。ポジションはテニュアトラックで、期間は一旦4年、更新の可能性あり、という感じです。

上海交通大学 安泰経管学院上海交通大学 安泰経管学院

まあ、中国の大学に決めた理由、また、決まるまでの経緯についてはまた後日ご紹介することにして、今日は表題の通り、ビザの話です。


就労ビザ取得にはまず、就労許可がいる


当然、現地で働くわけなので、就労ビザを取得する必要があります。

僕の場合、大学に留学するためのビザ(イギリスの場合はTier4ビザ、というのがそれに当たります)の出願を、修士のときと博士のときとで2回やったことがあるのですが、両方共、自力でなんとかなりました。簡単にいえば、「大学からもらったオファーの証明書」と、「ビザの出願書類」と「財産証明(現地についてからの数カ月分の生活費が賄えるだけの額が銀行口座にあることがもとめられる)」を出せば、基本的にはそれでOKです。妻の帯同ビザについても戸籍謄本を翻訳すればそれで結婚関係の証明になり、十分であります。

しかし、今回は全く様相が違います。まず、中国での就労ビザを取るためには、中国の関連当局から就労許可(work permit)を取る必要があります。単に、就職決まりました〜といって、就職先からのオファーレターを持っていっても、大使館はビザを出してくれません。

で、その就労許可をとるために必要な書類がくせものでして。

① 無犯罪経歴の証明書 (これは、日本の警察に本人がいって出してもらう必要がある)

② 最高学歴の卒業証明 (これは、LSEから出して貰えばOK)

③ 仕事経歴の証明 (僕の場合はリクルート1社だけなので、リクルート分でOK)

④ 婚姻関係の証明書 (妻の帯同ビザ申請に際して、妻も連れてきていいよ、という書類を中国当局から出してもらう必要があり、そのための証明に必要)

⑤ 僕と妻のパスポートの現物 (はい、現物です。コピーじゃありません)

を、用意するように求められています。

①は指紋を元に日本が犯罪記録をチェックするので、指紋が必要で、つまり本人が日本に自分で行かないともらえません。僕の場合は、ロンドン在住ですから、わざわざこれのためにエアチケット取って日本に一時帰国しました。まあ、研究をむりやり絡めて、費用は指導教官の研究費からうまいこと出してもらったので実損はたいしたことないですが、お金なかったらどうするんだ!という話です。

さらに、①④に関しては、日本の外務省で書類の証明をしてもらい(公印確認・アポスティーユというそうですが)、その上で日本にある中国大使館でさらに確認・証明をしてもらう(正確に言うと、大使館からアウトソーシングされている、ビザセンターにやってもらう)必要があります。

②に関しても以下同文でして、イギリスのForeign Office→ロンドンにある中国大使館(からアウトソーシングされているビザセンター)に、証明をしてもらう必要があります。

さらにさらに、すべての書類には中国語翻訳が必要、という段取りになっております。

と、いうことで、5月にこのあたりの準備をスタートしたわけですが、結局今日、ようやくすべての書類がそろいました。実に、2ヶ月かかっております。また、日本での書類証明に必要な期間、日本にいるわけにもいかないので、この手の業務を専門にやっている行政書士に依頼をし、イギリスも同じく自分でやる時間がないので同じような業者に依頼しました。

結果として、かかったお金もバカにならない額でして、旅費を除いてもあっさり10万を超える費用がかかっております。こんなに手間と金がかかるってわかってたら、オファーを受ける際に、着任関連のコストとして請求できるか事前交渉したのに・・・と思っても、今更遅いわけでして、すべて(上記の旅費を除き)自腹です。

僕みたいに、海外留学からさらに別の国に就職、という行為をする人がどれくらいいるかわかりませんが、そういう奇特な方が万が一このページをご覧になった場合は、ぜひ、この点は事前交渉項目に入れておくことを熱烈にお勧めする次第です。


契約書をめぐる交渉


そして、上記の①から⑤は僕の方で準備する必要がある書類ですが、それに加えて、就職先の大学が雇用契約書を用意して、それに僕がサインをする必要がある、とのこと。

まあ、就職活動の際にもらったオファーがあるので、それの内容を元にした契約書を送ってもらうだけだし、あっさり進むはず、と思っていたら、思わぬ落とし穴がありました。

その話をしてから数日後に担当者から送られてきた契約書は、オファーの際の条件とは全く違う内容で、給料もめちゃくちゃ安い内容でして。担当者曰く、「これはあくまで就労許可申請用の仮のやつだから、とにかくサインして」とのこと。「仮のやつだから」と口約束で言われても、サインしてしまえばそれは契約なわけで、正直言って、そんなものにサインするわけにはいきません。

と、いうわけで丁重に(いや、あくまで丁重にですよ)、内容が全く違う内容なので、仮のものだとしてもこれにはサインできない、正式なものを送ってほしい、というふうに依頼をし、一応担当者からはOKの返事をもらいました。

ちょうど、昨日まで言っていたドバイでの学会(Academy of International Business)でお会いしたとある先生からは「中国の大学との契約については、内容を精査したほうがいいよ。僕の知っている元生徒たちによると、就職活動のインタビューの際に言われてた内容と、実際に就職してから求められることがかなり違うケースが結構あるみたいだから」と言われたので、なるほど、という感じもしました。まあ、もちろん、中国に限らず、どんな場合も契約の中身を精査するのは大事ですね。

が、そのやり取りをしてから1ヶ月経ちますが、なんの音沙汰もないので、どういうことかなーと首を長くして待っております。僕の方の書類がそろっても、向こうの契約書ができないと、物事は進まないはずなので、多少心配であります。


パスポートとは3週間さよなら


で、上記の通り、⑤パスポートの現物を送る必要がありまして。しかも、どうやら就労許可の獲得には2-3週間かかるらしく。現物を送る手間を考えると、実質3週間から1ヶ月近く、パスポートが手元にない状態になるわけです。

正直言って、日本にいるならともかく、イギリスにいる状況で3週間から1ヶ月近く、パスポートを手放すというのはどうかと思うわけですが、就職先の担当者に言っても「ルールだから」ということですので、まあ、しょうがないです。

と、いうわけで、博士課程が終わったら、ヨーロッパを去る前にしばしヨーロッパ旅行を楽しもう、みたいな甘い計画を立てていたのですが、どうも7月はロンドンで塩漬けになること確定です。博士課程をやっている間、週末も研究三昧の僕に付き合って、あんまりヨーロッパを満喫する余裕もなかった妻に最後くらいは・・・と思っていたのですが、台無しです。全く、我が家の平和をどうしてくれる、と中国当局に多少苦情を言いたい気持ちです。


最後はビザの申請


で、ここまでくれば、ビザを普通に申請すればいいだけなので、なんとかなるはずです。一応、エクスプレスサービスとかもありまして、まあ、数日でビザはでるはず・・・なのですが、上記の通り、そこまでたどり着けるのかがよく分からない現状であります。

また、これについては、結局どうなったのかなど、共有しますね。

 

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