なぜ30代後半からロンドンで博士課程に進み、そして今、中国のビジネススクールなのか(2)

いよいよ中国からの就労許可がとれました!

来週にはビザの申請をし、すべてがうまくいけば再来週には上海での仕事をスタートしたいところ。いよいよ、最終段階です。就労許可さえ取れてしまえばあとは大きな問題は起きないはずですが、最後まで気が抜けません。どうなることやら。

さて、今回はまた、キャリア選択についてのお話です。キャリアについて、前々回、なぜ30代後半からロンドンで博士課程に進み、そして今、中国のビジネススクールなのか(1)で、自分の人生を考えた時のステップとしてアカデミックキャリアを考えて、そのためには博士課程に進むことにした、ということを書きました。今回はその続き、なぜ上海交通大学のビジネススクールを就職先にしたか、ということです。

まあ、もちろん、採用していただけた中から就職先を選ぶしかないわけですが、一方で、そもそも応募段階から応募しなかった大学もありますし(例えば、アメリカのビジネススクールは一切応募しませんでしたし、日本の大学も応募してません)、採用のオファーをいただけたものの辞退させていただいたケースも2校あります。と、いうわけで、その辺りで、何を基準にしたか、というお話です。

簡単に言うと、「何がしたいか」「どんな機会があるか」「何が求められるか」「自分の力で通用しそうなのはどこか」というのの掛け算なわけですが(リクルート出身者の方にはおなじみのWill × Can × Mustと似てますね)。

まず1点目は、「日本に戻るよりも、まずは海外で試してみたい」ということです。

アカデミックの労働市場には、大雑把に言うと、英語で論文を書き、英語で授業をする「グローバルな市場」と、各国の現地の言語(日本の場合は日本語)で論文を書き、授業をする「ローカル市場」があります。勿論、白か黒か、ですっぱり別れてるわけではなくて、日本語と英語の両方で研究を発表してる研究者もいますので、便宜上の分け方ですが。

どちらも厳しい就職状況であることは変わりませんが、世界中から応募者が来る労働市場で通用するのだろうか?というところにワクワクした、ということですね。ここには理屈はあんまりなくて、やってみたかった、という話です。

もちろん、全く勝算がなかったわけではないです。指導教官や共同研究者からの評価や、学会で毎年1回会う同じ分野の研究者たちと話している実感から、「全く通用しないわけでもないだろう」とは思ってました。だったら、一度チャレンジしてみるか、という話です。

2点目は、そうはいっても自分の研究が「ウケる」大学でないとはじまらない、ということです。

まず、自分の研究実績で考えると、研究で世界に名の売れた超名門大学には到底、入れなさそうです(一応、博士期間中に国際学術誌に論文は1本発表してるんですが、いわゆるバリバリのトップジャーナルじゃないし、1本だけなので)。とはいえ、まずは研究実績を積みたいですから、研究に力を入れていて、実際に研究で成果を上げている教員がいる大学を狙いたい。また、授業中心のポストじゃなくて、研究にウェイトを置いたポストがいい。

また、経営学の中でもある程度、分野を明確にして応募がでますから、全く筋違いの求人に応募してもしょうがない。さらに、既存の教員の研究内容や実績を見てみると、「自分の研究トピックスは、この組織にフィットしそう」と感じるポストと、「うーん、なんかあんまりハマらないなあ」と感じるポストがあります。この辺りは、明確に応募書類に書いてあるわけじゃないですから、情報を読み込んでみてどう感じるか、という話です。が、後から振り返ると、「ハマらないかも」と思ったところは、全くインタビューのお誘いもかかりませんでしたら、まあ、そんなに筋が悪い読みでもなかったのかもしれません。

何十校、下手すると百校近く応募する人もいるそうですが、僕の場合はこの辺りを鑑みながら、ある程度絞って、20校くらい、応募することにしました。採用のオファーをもらっても、行こうと思えないポストに応募してもしょうがないし、とはいえ、向こうからみて、「お、こいついいかも」と全く思ってもらえなさそうなポストに応募しても、これまたしょうがない、ということです。

そして3点目は、地域軸で、アジアまたはヨーロッパ、です。

ヨーロッパは、ロンドンに住んでいましたから馴染みがあるし、これまでに知り合った研究者と共同研究をやるにも時差が少なくて便利、ということです。あと、LSE在学中に、イギリスの大学の教員資格を取ってあったので、イギリスの大学は有利だろう、と考えてました。なので、他がダメでもイギリスで何校か受けておけば、一つくらい引っかかるだろう、的な考えはなかったと言えば嘘になります。

アジアに関しては、研究的にアジアの中における多様性に関して興味があった、ということと、国として高等教育に力を入れていこうとしており、国を挙げて投資をしているケースが結構多い点が魅力です。

香港やシンガポールの大学は、世界的に研究での競争力が非常に高く、給与もトップクラスなので(そういえば、この間、一ツ橋大学の若手の准教授が、高額報酬で香港に移ったというのが話題になってましたが、率直に言って、日本の研究者の給与はあんまり高くないです)、世界中から応募が集まるのですが、それら以外の、「アジア圏では知られているけど世界的にはまだまだこれから、でも、虎視眈々とトップランク入りを狙ってる」みたいな大学を狙えるかな、と思っていたわけです。

結果的に上海交通大学はまさにこれにぴったり当てはまる大学でした。中国として、グローバルな大学ランクでトップ層に押し上げるために投資している。一方で、世界的にはまだまだ知られてないし、実際の教員リストを見ると中国人が圧倒的に多くて(多分、僕の学科は外国人は僕だけです)、人材は多様化されていない。シンガポールとか香港のトップスクールには応募しても、上海交通大学には応募しない連中が、結構いそうです。研究的にも、僕の研究と接点がありそうな研究者が中堅に何人か居て、うまくはまりそう。

正直、僕から見ると、狙い目です。

一方、不安要素としては「組織に馴染めるのか?」という点がありました。中国には、海外の資本が入った大学もあり、例えばイギリスのNottingham Universityとか、Liverpool Universityとかが中国にキャンパスを持っています。こうした大学の場合、イギリス式の組織運営、学事運営になっているはずですから、適応にそんなに苦労しないだろう、という読みが立ちます。一方、交通大学は純粋な「中国の大学」です。仮に、「中国流」の運営が行われているとすれば、「極少数派」の外国人として、その中に馴染んでいくのはかなり大変そうです。

その辺は、面接で訪問した際にかなり気をつけてヒアリングをして、結果的に「まあ、大丈夫じゃないかなあ」と思えたので、オファーを受けることにしました。実際には、グローバルに競争力を高めていくための施策として、アメリカなどでトップスクールで活躍していた教授陣を引き抜いてきて、彼らが主導する形で組織変革が行われていること、また、実際に若手、中堅の研究者がのびのび研究をしている点が、決め手になりました。まあ、この辺りは普通の転職活動とそんなに変わららないのかもしれません。

と、いうわけで、おそらくここから先は、中国からのレポートになろうかと思います。実際に、現地に入ってみて何が起こるか、こまめにアップしていきます。

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投稿者: 吉川克彦(Katsuhiko Yoshikawa)

国際人事・組織論に関する研究者、コンサルタント。PhD (Management, London School of Economics and Political Science)。2017年8月より、上海交通大学安泰経管学院にて、Assistant Professorに就任予定。 主な研究分野は組織論、人材マネジメント論、国際経営論。 Journal of World Businessに査読付き論文が掲載されたほか、Academy of International Business, Academy of Management, Association of Japanese Business Studiesなどの学会にて研究発表の実績あり。また、日本国内でダイバーシティマネジメントについての書籍を出版。また、人事関連の雑誌への寄稿、新聞への論考を掲載。主な研究実績についてはこちら。 コンサルタントとして、様々な業界の日本企業の人事・組織変革を支援。主なテーマは、企業理念の浸透、ダイバーシティマネジメント(女性活躍促進を含む)、人事諸制度の再構築、海外法人における人事体制の確立、次世代リーダー育成、採用戦略の立案など。 1998年にリクルートに入社。人材、組織に関する研究、コンサルティング、サービス開発に 従事。2013年に同社を退社。 1974年 兵庫県西宮市生まれ。京都大学経済学部卒。2011年にLondon School of Economics and Political Science にてMSc. Management, Organisations and Governance 優等修了(Distinction) および、PhD in Management (Organisational Behaviour and Employment Relations Track)を終了。 ご連絡はこちらまで。 katsuhiko78@gmail.com / k.yoshikawa@lse.ac.uk

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