上海交通大学の学部生の実態。

中国では春節の長期連休がおわりまして、徐々に街に人が戻ってきています。連休中は人も車も少なく、久しぶりの静けさを楽しめましたが、どこもかしこも人だらけの普段通りの上海に徐々に戻りつつあります。

本学でも新学期がスタートしました。

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今学期は、二つ授業を担当してまして、それぞれ月曜日、火曜日に最初の授業を行いました。いずれも多くの学生さんが出席してくれてありがたい限りです。

今回は僕にとっては新しいことが一つありまして、それは、「中国人の本科生(いわゆる日本でいう学部生)」がメインのコースを担当する、ということです。前の学期は交換留学生ばかりを集めたコースを担当してましたので、同じ学部生でもほとんどの学生は欧米からの生徒で、プラス、アジア圏からの生徒がごく少数、という塩梅でした。ですので、地元(といっても、中国全土から学生は来るので、出身地はいろいろですが)の学生に密に接するのは、今学期が初めてです。

ちょうど、前の期に留学生に教えた授業と全く同じコース(Cross-cultural Management)を今期は本科生たちに教えていますので、非常にわかりやすく反応の違いが見て取れるのが面白いところです。この投稿では、忘れないうちに第1回の感想を書いておこうと思います。

英語がうまい

僕は授業では生徒にポンポンと話を振って、生徒に発言させながら進めていくのが好みです。ですから、生徒との間で英語でコミュニケーションが成立しないと話になりません。

ほぼ中国人の学部生のクラスだ、とわかった時点で、その点についてちょっと心配をしていたのですが、完全に杞憂でした。かなりの割合(8割くらい?)で、なめらかに英語でコミュニケーションができるな、というのが実感です。正直言って、驚きました。もちろん、途中でうまく単語が出てこなくて口ごもってしまったりする学生も一部にいましたが、あくまで少数です。

ちなみに、僕の担当している授業はマネジメント専攻の学生では必修になっているので、英語が得意、あるいは英語で授業を受けたい、という学生だけが集まっているわけではありません。ですので、上海交通大学の学部生の英語のスピーキングのレベルは総じてかなりのものだ、と考えて良いと思われます。

中国は英語教育にここ数年かなり力を入れていると聞いてますし、街でも子供向けの英語教育に関する広告をとてもよく目にします。上海交通大学は中国でもトップクラスの大学の一つですから、うちの学生で中国の大学生全体を推し量ることはもちろんできませんが、少なくとも僕の教え子たちの英語力は、正直全く侮れません。中国のエリート候補たちは英語に本気だな、というのを垣間見た思いがします。

でも、クラスで発言を求められるのは苦手

一方で、じゃあ授業の間にポンポンと発言が出るかというと、全くそうではありません。むしろ、こちらから話をふっても、自分から手を上げて発言する学生はほとんどいません。LSEでの経験から東アジアからの学生は授業中にあんまり発言してくれないというのは知っていたのですが、それがクラスの大多数(留学生もいますが)となるとなかなか手強いです。発言がさっと出るのは、

  • まず、グループで周りの生徒とディスカッションさせた上で、個人を指名する
  • 明らかにこっちが正解だろう、とわかるシンプルな二択質問を全体に投げかける

というケースに限られます。ただし、二つ目のケースでも、「なぜそう思うの?」とさらに深掘りする質問を投げかけると、シーンと黙ってしまいます。

この辺りは欧米からの留学生が多いクラスとは非常に対照的です。欧米人、あるいは、アジア系でも欧米の教育を受けている学生たちは、ガンガン手を上げて自分から声を上げますし、深掘りの質問をしてもなんらか答えをひねり出してきます。

文化的に言えば、いわゆる「面子」の影響が大きいのだと思われます(先生や同級生の前で間違えるのが恥ずかしい、的な話です)。あとは、高校生までの教育が「正解」を出すことを重視してるからかもしれませんね。安心して発言できる環境じゃないと発言をためらう、ということではないかと思われます(追記:日本でも似たような特徴はある、という指摘を何人かの方からいただきました。確かに文化的にも教育的にも似たところがあるように思います)。

また、授業のやり方も、中国の先生たちは授業では一方的に話をして、生徒に発言を求めることは少ない、と聞きますので、その辺りの影響もありそうですね。

瞬発的な理解力は結構高そう(まだ印象レベル)

この点については予想通りです。中国の厳しい受験戦争を通り抜けてきた生徒たちなのであまり心配してませんでした。

グローバリゼーションってどういうこと?とか、文化って何?とか、大学2年性の段階ではあんまり考えたことがないであろうテーマの質問を投げかけても、断片的ではあっても筋は悪くない答えが返ってきますし、こちらの解説を聞いて、「なるほどね」という顔で飲み込んでいる学生が多い印象です。

もちろん、真面目に授業をじーっと聞いてふんふん、と頷いている学生もいれば、明らかに集中していない学生もいます。まあ、大人でも講演とかで人の話をじーっと聞くのが苦手な人もたくさんいますから、別に驚くような話ではありません。

ただ、同僚から聞くところによると、弊大学の学生たちの「試験で点数を取る」ということにかけての情熱と実力には凄いものがあるらしいので、これからが楽しみであります。

検索文化すごい。

中国の若者たち(に限らず大人もですが)は、ご他聞に洩れずソーシャルメディアにどっぷりでして、いつでもどこでもWechatでチャットをしています。僕の授業では、授業中のチャットやメールのやり取りは禁止、見つけたら端末没収、と最初に宣言してますので、さすがに第1回の授業から堂々とやっている学生はいません。

が、一方で、グループディスカッションを始めさせると、即座にパソコンやスマホで検索をしてるのには、ちょっと驚きました。生徒たちが喋ってる間にクラスを巡回してると、明らかに、「あ、質問の答え探したな」とわかる画面が表示されてたり。で、それを見ながら議論してるんですよね。

これについては、なかなか悩ましいなあ、というのが本音です。ふわふわした概念について、自分の頭で考えて定義をする、というのは、僕はとても大事な思考能力だと思うのですが、一方で、世の中に溢れている情報を取捨選択して使いこなす能力も、現代には重要なためです。まあ、後者は教室でやってもらう必要はないので、教室では前者に集中する、というのが一旦の僕の対応ですが、まあ、どうしたものかなあ、と思ってます。

この点については、おそらくうちの学生の特徴、あるいは中国の学生の特徴、というわけではなくて、今の世代の特徴、ということかもしれません。

 


 

と、いうわけで、上海交通大学の学部生についてまとめてみました。

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投稿者: 吉川克彦(Katsuhiko Yoshikawa)

国際人事・組織論に関する研究者、コンサルタント。PhD in Management(経営学博士)。2017年8月より、上海交通大学安泰経管学院Assistant Professor。 主な研究分野は組織論、人材マネジメント論、国際経営論。研究者への転身前には、コンサルタントとして、様々な業界の日本企業の人事・組織変革を支援。 1974年兵庫県西宮市生まれ。1998年京都大学経済学部卒。同年リクルートに入社。人材、組織に関する研究、コンサルティング、サービス開発に 従事。2013年に同社を退社。2011年にLondon School of Economics and Political Science にてMSc. Management, Organisations and Governance(Distinction) および、PhD in Management (Organisational Behaviour and Employment Relations Track)を修了。 ご連絡はこちらまで。 katsuhiko78@gmail.com / k.yoshikawa@lse.ac.uk

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