職場に子供を連れて来てもええじゃないか。

「職場に子供」というと「は?」と言われるかもしれません。確かに、僕も日本で働いていた時は、職場には大人しかいないのが普通だと思って特に疑問も持たなかったのですが、最近、その「常識」が大きく揺さぶられる事件が二つほどありまして。職場に子供を連れてくることって結構「あり」ないんじゃないかな、と考えてみました。

その1:育休プチMBA

今僕がやっている研究プロジェクトの一つに、ワーキングマザーの育休からの復帰に関する支援プログラムの効果を検証する、というプロジェクトがあります。これは、静岡県立大学の国保祥子さんと、英Durham University Business SchoolのDr. Chiahuei Wuと一緒にやっているもの。

このプロジェクトは、国保さんが過去数年やってきた育休プチMBAというプログラムをベースになっています。育休中のワーキングマザーを対象に、ケーススタディを通じて復帰後の仕事について様々な視点から考えるワークショップを複数回実施する。そして、その前後での彼女らの仕事やキャリア、仕事と家庭の両立に対する態度がどのように変化するか、また、復帰後のパフォーマンスはどうか、といったところを、ワークショップに参加していない人たちとの比較も含め、分析し、効用を明らかにすることを狙っています。

19社の企業様からのご協力をいただいたパイロットスタディを行っていて、かなり意味のある変化が生じるということが見えてきているのですが、それよりもここで紹介したいのは、ワークショップの様子。

20180209_023057195_iOS20-20E382B3E38394E383BC
(出典:国保さんのブログより)

ご覧の通り、子供を抱えたり、マット上で遊ばせた状態で(サポートスタッフが1人ついてます)真面目なケーススタディの議論をしているわけです。僕は、事前に子連れ参加あり、と聞いてはいたものの、この写真を見てなんだか結構とショックを受けました。それだけ、暗黙の前提に縛られてたってことでしょうね。

子供が周りにいて動いてても問題なく議論が成り立つのは、男性よりもマルチタスクが上手な女性ゆえ?と思ったりしますし、ある程度大きくなると動き回って危ない(なので、このワークショップではお子さんは1歳未満に限定してます)といった気になる部分もあるわけですが、少なくとも、小さな子供が周りにいたり、抱いてても、真面目なケーススタディの議論が成り立つ、というのがポイントです。

その2:安泰経済与管理学院(うちのビジネススクール)の夏休みの状況

次に、先週あたりから私の身の回りで起きている現象です。

日本と同じく、中国も小学校や中学校が夏休みに突入しているわけですが、何が起きているかというと、うちのビジネススクールの教務や人事などのアドミスタッフたちが子供たちを大学のオフィスに連れてきて、

  • 会議室で子供には夏休みの宿題をさせておいて、時々覗きに行く
  • 空いてる公共スペースのソファとかデスクでお母さんが仕事をしてて、横に子供もいる
  • ランチタイムには小さい子供を連れて大学の中庭でお散歩

みたいなことがそこかしこで行われているのです。

さらには、若手の教員たちの中にも、男女問わず子供を研究室に連れてきて、自分が仕事をする傍らで子供は遊んでるor勉強している、という人がいるようです。エレベーターで子供と一緒に乗っている同僚を見かけます。

改めて思い出してみると、LSEにいた頃も、僕の指導教官が小学生の娘を大学のオフィスに連れてきていて、僕とのミーティングの傍に娘さんがiPadで何かやってた、みたいなことがありました。

もちろん、大学は普通の企業とは少々性質が違う組織(特に、教員が若手でも自分の研究室を持っている、というのは、全然違いますよね)ではあるのですが、それなりに厳しいナレッジワークの現場でもあります。その中で、普通に子供たちが職場にいる、それでも仕事は回っていく、という風景はなかなか新鮮なものであります。

さらに、この話を先日、友人と話していたら、同じような事例が日本の職場で出てきました。なんでも、彼の知人のコンサルタントは夫婦共々マッキンゼーに勤めていた当時、赤ちゃんを職場に連れて行って2人で面倒見ながら仕事をしてたらしいのです。これまたマッキンゼーは一般的な働き方の職場ではありませんが、タイトなスケジュールのプレッシャー下の厳しいナレッジワークの現場でもそれが成り立つ、という実例ではありますよね。

職場に子供を連れてきてもええじゃないか運動。

こうした事例を考えてみると、日本でも夏休みにお父さん、お母さんと一緒に子供がオフィスに来て、その辺で勉強していても別にいいのでは?とも思うわけです。

「家庭を仕事に持ち込むなんて、不謹慎な」みたいなことをいう管理職が出てきそうですが、実際にやっている上記の二つの例を見る限り、時々様子を見る必要はあるし、多少ぐずったりとかもあるかもしれませんが、真面目な議論や仕事がそれでダメになってしまうわけでは決してない。

そもそも、家庭と職場が分離したのは工業化時代以降の話であって、農業の時代には、家の周りで働いているので子育てを皆でしながら農作業をしてたそうですから、こういう「不謹慎な」みたいな感覚が一般的になったのはおそらく比較的新しいことだと思われます(→詳しくは「社会学講義(筑摩書房 橋爪大三郎他著)」の家族社会学のパートが面白いです)。

また、日本の通勤事情を考えると、子供を乗せて満員電車に乗るなんて、という意見が当然想定されます(企業内託児所の議論でも同じですね)。が、これまた、オリンピックの議論にも見る通り、朝はテレワークで、少し遅めの時間から時差通勤をしたりとか、いくらでも解決策はありますよね。そもそも、リモートオフィスのような都心じゃない職場を提供する企業も増えてきているわけで、満員電車で長時間揺られてオフィスに通うことが「当たり前」と考えなくてもいい企業も出てきている。

顧客訪問どうする?とか、情報管理は?とか(スマホの扱いはルールがいるでしょうね)いろいろ懸念はありますが、家族訪問日みたいなのをイベントとして実施している会社(リンク先は京セラさんのサイト)もありますしねえ。夏休み期間は子供を会社に連れてきてもOK!みたいにするのもありかなと。

毎日会社に通うのは子供にとってはつまらないでしょうから、各家庭せいぜい数日、あるいはたまーに、というのが現実的なラインでしょうね。ただ、夏休みの間の毎日、子供が日中いる場所を確保するというのは子育て中の夫婦にとってはなかなか大変じゃないかなあとも想像します。そういう意味で、職場における子供に関するルールというか規範をゆるーくしたら、助かることもあったりするのかなあと思ったわけです。

どうでしょうかね?成り立たないでしょうか?自分自身は子育てをしてないので、当事者感がなくて恐縮なのですが、思いのほか、ありじゃないかなあ、と思ったので書いてみました。ご意見お待ちしております。

広告

投稿者: 吉川克彦(Katsuhiko Yoshikawa)

国際人事・組織論に関する研究者、コンサルタント。PhD in Management(経営学博士)。2017年8月より、上海交通大学安泰経管学院Assistant Professor。 主な研究分野は組織論、人材マネジメント論、国際経営論。研究者への転身前には、コンサルタントとして、様々な業界の日本企業の人事・組織変革を支援。 1974年兵庫県西宮市生まれ。1998年京都大学経済学部卒。同年リクルートに入社。人材、組織に関する研究、コンサルティング、サービス開発に 従事。2013年に同社を退社。2011年にLondon School of Economics and Political Science にてMSc. Management, Organisations and Governance(Distinction) および、PhD in Management (Organisational Behaviour and Employment Relations Track)を修了。 ご連絡はこちらまで。 katsuhiko78@gmail.com / k.yoshikawa@lse.ac.uk

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください