いよいよ夏本場(とはいえ梅雨もあけてませんが)ですね。夏といえば僕にとっては学会シーズンでもあります。年中いろんな時期にいろんな学会が行われていますが、世界最大の経営学の学会であるAcademy of Management (AoM)の年次総会が7月末から8月初旬ごろに行われるのと、あとは、僕のホーム学会とも言うべきAcademy of International Business(AIB)が6月末〜7月頭頃に行われるからです。欧米の大学は9月始まりで5−6月くらいにかけて年度が終わるので、夏のお休みの時期(農閑期みたいなもんですかね)に国際学会がある、ということになります。

今年はコロナウィルスで国際旅行ができませんし、そもそも千人を越える人数が集まるようなイベントを行うことは状況が許しません。そのため、各学会ともにオンラインでの開催になっています。発表者が自分の論文の概要を説明したビデオを撮影して、それをアップロードしてみんなが見れるようにするとか、シンポジウムはリアルタイムでZoomとかでやるとか、そう言った形で行います。運営側はさぞ大変だっただろうなあと思います。ほんと、お疲れさまです。頭が下がります。

今年のAIBは7月の上旬の開催だったので、発表のビデオをとったり、他の人のビデオを見たり、といった形で自宅から参加しました。で、終わってすっかり頭から忘れさっていた今日になって、嬉しいニュースがメールで届きました。表題の通り、Best Reviewer Awardを受賞したとのことです。

これが何か、ということを説明するには、まず、学会が基本的にピアレビューで成り立っている、というところから話をする必要があります。

学会というのは、自分の研究を発表したい研究者が論文を投稿し、発表する場ですが、発表したければ何でも発表できるわけではありません。投稿された論文を他の研究者がレビューをして、学会での発表に値する論文かどうか、ということを審査する仕組みになっています。当然、誰が書いたかということが分かってしまうと依怙贔屓とかが生じるおそれもあるので、匿名の形で行います。だいたい、一本の投稿論文あたり、2人ないし3人位が見て、その評価で発表できるかどうかが決まる、ということが一般的ではないかと。

ここで、たくさんのレビューが必要になるため、学会に参加する研究者たちがお互いにレビューしあう仕組みになっています。例えば、僕も自分の研究を投稿する一方で、誰かの論文のレビューもする、というわけです。このため、このシステムは、「仲間(Peer)同士でお互いにレビューする」ということからピアレビューと言われています。

そして、こうしたレビューの際には、単純に良し悪しを判断する、というだけではなくて、「このへんは良いけど、このへんは見直しが必要かも、こういう観点でも考えてみたら?」というふうに建設的フィードバックをすることが慣行になっています。そして、投稿した研究者の手元には、レビューを突破した場合もそうでない場合も、それらのフィードバックが届くようになっています。そのため、自分の論文を匿名の第三者の目で見てもらってタダでアドバイスをもらえる、非常にありがたい仕組みなのです。もちろん、コメントは玉石混交で、なんじゃこれ、みたいに思うことも無いわけではありませんが、すごく参考になるコメントを貰えることもあります。

この仕組みは僕のブログを読んでいただいている方にはおなじみの、「お互いさま」の仕組みになっています。自分も含めてみんながちゃんとやってくれるから、自分も他の研究者も得する、という仕組みです。そのため、「自分の論文を誰かに見てもらう以上は、自分も人の論文をレビューして、真摯に建設的フィードバックをするのが当然」という規範が研究者の世界には存在します。そして、「適切なレビューをして効果的なフィードバックを書く人はきちんと褒める」という慣行があります。

話が長くなりましたが、今回僕が頂いたBest Reviewer Awardという賞は、まさにこれに当たります。AIBの場合、何百人かのレビュアーの中から30人くらいが選ばれるのが通例です。僕は論文自体で賞をとったりノミネートされたことはあるのですが、レビューで賞をもらったのは初めてです。何年か前から良いレビューを書こう、と意図して取り組んできたので、こういう形で認められた、というのは嬉しいことです。自分自身で学術誌に論文を投稿して、そこからのレビューフィードバックと格闘してきた(学術誌の場合はレビューを受けてフィードバックを踏まえて修正版を提出して、更にレビューを受けて・・・というサイクルが何ラウンドかあってようやく掲載にこぎつけるのが一般的です。当然その途中でだめになることも多いです)ので、そこからの学びがあったのかも、とも思います。

ある意味、研究者の業績としては地味な賞ですが(やっぱり本丸は自分自身の研究論文なので)、他の研究者への貢献ができて、それが認められた、という点で結構嬉しいです。引き続き、貢献を続けたいものです。

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