昨日は4年間のロンドン生活で僕たちが好きだったこと ベスト10を書きましたが、今日はその続編、残念だったことベスト(ワースト?)8です。

日本のメディアには、よくこの国はこんなに素晴らしい、みたいな情報が載ってたりしますが、世の中に完璧な国など存在するはずもなく、良いところもあれば残念なところもあります。実際、ロンドンに住んでいると、あー、これは残念だなあ、と思うことも沢山ありました。おそらく旅行だと気づかないところに目が向くのが、何年か生活してみることの良さかもしれません。

と、いうことで、公平を期すべく、残念なこともまとめておこうと思います。10個書こうと思ったのですが、残念ながら?8つしか思いつかなかったので、無理にひねり出すよりも、それで止めておこうと思います。

 

① ゴミをその辺に捨てる人が多い。

ロンドンで生活して、まず気になるのは、道にゴミがいっぱい落ちていることです。ペットボトル、お菓子の包み紙、テイクアウトの食べ物のトレイに始まって、(意味がわかりませんが)靴下が一足とか、着古したセーターとか。観光エリアはそうでもありませんが、普通に生活するエリアだと、普通に道にゴミが散乱してます。

あとは、電車の中でも食べ残しを席に放置したり、読み終えた新聞を床や椅子にそのまま置いていったりとかも日常的な風景です。とにかく、ゴミ箱があるところまで我慢して持って行って、自分で捨てる、ということをしない人が沢山いるのです。ちなみに、これはスターバックスやマクドなどのお店でもそうです。テーブルの上に食べ散らかしたものを片付けずに放置する人がかなりいます。

正直言って、「自分の出したゴミには自分で最後まで責任を持って片付ける。他人に迷惑をかけない」という感覚が染み付いている日本人からすると、とっても残念な気持ちになります。

 

② トイレの使い方が汚い。

①に引き続いてですが、トイレの使い方が残念なのもロンドンの特徴。なぜそうなるのかわかりませんが、トイレットペーパーとか、手を拭くペーパータオルとかが、床にいっぱい落ちている、というのがよくあります。これは僕も妻も、日常的に出くわしましたので、男性トイレ、女性トイレ問わない現象です。

仮に、自分が落としてしまったとすれば、(多少汚いかもしれないけど)自分で拾って、あとで手を洗えばいいのに、と思うのですが、それをしない人が沢山いる、ということではないかと思います。もちろん、使った後に流してないとか、そういうことはないので、衛生面でひどい、という話ではないのですが、「自分のやったことに最後まで責任持とうよ、次に使う人が不愉快じゃないの」と、毎度毎度、残念な思いになりました。

ちなみに、トイレの設備も残念なことが一つ。日本(や他の多くの先進国の場合)、トイレの個室のドアには、バッグなどがかけられるフックが付いていることが一般的だと思いますが、イギリスのトイレはこれがないか、壊れているケースの出現率がとにかく高いのです。うーん、残念。

 

③ 公共サービスの信頼性が低い。

まず、鉄道がとにかく遅れたり、キャンセルになったりします。よくあるのは信号故障ですが、それに加えて、車両故障とか、運転手が欠勤してて人手が足りなくて車両が走らせられないとか、様々な理由で電車が予定通りにこないのです。僕たちはロンドンの市内に住んでいて、「好きだった点」にも書いた通り、市内の公共交通は比較的安定しているので良かったのですが、郊外のベッドタウンとロンドンをつなぐ鉄道(National Railと言われるもの)は、かなり信頼性が低いです。

特に、ロンドンの南側のケント地方とかを走っているサウザンレイルウェイは、この春から夏は経営陣と組合の対立で列車の遅延やキャンセルが相次ぎ、普通に毎日会社に通うのが大変、という悲惨な状況が半年くらい続いておりました。

もう一つ、イギリスで残念なのは郵便です。お金を払って速達にすればちゃんと着きますが、普通の料金で送ると、1週間2週間音沙汰なし、みたいなことが普通に起こります。また、日本からEMSで送ってもらった本が、自宅に「不在届け」も届いていないのに、「局預かりにしていたでのですが、受取人が引き取りに来なかったので、送り主に戻します」というメッセージとともに、送り主に返送されてしまった、というケースもありました。こういうことを経験すると、日本の公共サービスって本当にレベル高かったんだなあ、と感じます。

 

④ 家の施工レベルが低い。

これはなかなか、分かってもらいにくいと思うのですが、家の細かいところの施工が雑なのです。例えば、電気のプラグを差し込む金属パーツがきちっと壁に固定されてなくてグラグラしてて、隙間からホコリが入り込みそうとか、お風呂のバスタブの周りのパッキングがちゃんとしてなくて、隙間から水がどこかに吸い込まれていくとか、壁のペンキがちゃんと塗られてなくてところどころムラがあったり、フローリングにペンキがはねちゃってたりとか、そういう話です。

これはどうも、こういう作業をする職人さんたちが、「素人に毛が生えた」くらいの人の比率が高く、きっちりプロフェッショナルにやってくれる人は価格が高いので、結果的に、素人仕事の比率が高い、ということに起因するようです。結果的に、「自分でやっても変わらないから自分でやる」という人も多いようで。僕たちの大家はまさにそのパターンでした。

妻の英語の先生(バリバリのイギリス人)に妻が聞いたところによると、とにかくそういう業者さんたちを雇う際は、自分できちんと選んで、全てのスケジュールを自分で組んで、作業を監督していかないと、ろくなことにならない、というのが、現地の感覚だそうです。

 

⑤ 医療の待ち時間がすごく長い。

イギリスは、国民皆保険で、誰でも無料で医療サービスを受けられます。これは素晴らしい仕組みなのですが、残念ながら無限に予算があるわけではなく、なおかつ金融危機以降はイギリスは緊縮財政を続けてます。この結果、何が起きるかというと、待ち時間が膨大に伸びるのです。

普通にかかりつけ医のアポイントを取ろうとすると(あ、まず、アポイント無しでは、かかりつけ医にも診察してもらえません)、2週間後、みたいなことが普通に起こります。そして、そんなの待ってられないから、と、大きい病院の救急コーナー(A&E=Accident and Emergency)に行くと、3時間待ちとががザラです。

これを回避しようとすると、プライベート医療という、国の保険の適用外の医療サービスもあるのですが、こちらは非常にお金がかかります。まあ、現実的にはしょうがないのだと思いますが、とにかくお金か時間を使わないとお医者さんに会えない、というのは、かなり大変です。

(注釈: 医療関係の友人からコメントがあったので補足ですが、イギリスのこの現状はやむを得ないことでもあります。医療は低コスト、アクセスの良さとクオリティを全て同時に達成することは不可能なので。イギリスは比較的、低税率の割に高齢化が進んでいるので、限界ギリギリのアクセスレベルで頑張ってるわけです。日本は医療関係者の献身的な努力で三つが比較的いいレベルで維持されてますが、限界間近なのは報道でもお馴染みですね)

⑥ レストランでのサービスレベルがまちまち。

レストランのサービススタッフですが、愛想はたいてい良いのですが、気が利かない人が多いなあ、というのが印象です。声をかけないとお皿を下げてくれなかったり、まだ食べてるのにやたらと皿を下げたがったりとか。注文したのに忘れられていて、こちらから声をかけると「なんだっけ?」と確認してきたりすることも、まま起こります。あとは、お支払いはテーブルでのカード決済がほとんどですが、声をかけても延々待たないとカードの決済端末を持ってきてくれない、油断すると忘れられている、ということもよく起こりました。

妻によると、「とにかく視野が狭い」という印象だそうで。彼女曰く、「自分だったら、料理を出しに行くときに、周りのテーブルを確認して、空いてるお皿を持って帰るとか、テーブル片付けるとか、帰り道でできることを考えながら動くけど、彼らはそういう風に周りを見てないと思う。目的だけ果たして、ついでにやれることを考えてないんだと思う」という観察でした。

もちろん、お店によっては素晴らしいサービスの店もありますし、個人できちっとやっている人もいるのですが、ばらつきが非常に大きく、結果的に全体的な平均値は低い、というのが、ロンドンのサービスの残念なところです。料理は美味しい店が多いだけに、勿体無いのです・・・。

 

⑦ 料理の下味がつけられない(のが伝統)。塩コショウよりも砂糖が多用される。

これは、美味しい店ではなく、普通の伝統的なパブとかに行くと起きる現象なのですが、イギリスの料理人はどうも、お肉やお魚に下味をしっかりつける、という感覚が欠如している人が多いようです。

たとえば、フィッシュアンドチップスのような魚の揚げ物を作るにしても、日本の感覚からすると、白身魚にちゃんと下味をつけて、それから衣をつけてあげたくなりますが、そういうことがまったく行われないままに、ただ、衣をつけてあげてあるのが一般的です。ローストや、ステーキでも同様でして、とにかく素材をそのまま焼いて、あとは食べる人が塩をふるなり、ソースをつけるなりご自由に、という店が散見されます。ヨーロッパの他の地域に行くと、まったくそういうことはない(例えば、ドイツとかオーストリア、フランスだと、必ず肉にせよ魚にせよ、しっかり味が付いてる印象です)ので、イギリス特有の味覚ではないかと。

あとは、お砂糖がとにかく大好きなのもイギリスの特徴でして、スーパーなどで売っているサラダや、出来合いのお惣菜などは、日本人の感覚からすると、塩味が足りなくて、とにかく甘い、というのが多いです。これは次の話にも関係するのですが。

 

⑧ (かなり立派な)肥満が多い。かつ、子供もぷくぷく。

肥満といえばアメリカが有名ですが、イギリスもかなり本格的なオーバーウェイトの方が沢山街を闊歩しています。大陸ヨーロッパ側に旅行に行って、ロンドンに戻ってくると、目に見えて横幅の大きな人が増えるのです。実際、統計的に見ても、イギリスはヨーロッパで最も肥満度が高い国の一つです。

まあ、大人になってる人はライフスタイルの選択ですから、別に個人の勝手といえば勝手なんですが、子供の肥満が多いのは本当に残念だなあ、と感じます。一家揃って、ぷくぷくもちもちで、得てして甘い砂糖たっぷりのドリンクをスーパーでたっぷり買ってたりするので、明らかに親の影響だと思います。

これについては、政策として「甘いドリンクに税金をかけて、砂糖の摂取量を減らそう」とか、「スーパーやメーカーに規制をかけて、砂糖の使用量を減らさせよう」とか、そういう議論が盛んに行われております。「いや、個人が意識して砂糖をとりすぎないようにして、子供のしつけの一環として甘いドリンクとかを飲ませないように親がちゃんとすればいいんじゃなの?」という疑問もわくのですが。

同じくイギリスらしいなあ、と感じるのは、かなりのボリューム感の体の皆さんがテレビで、「太っていることを、悪いこと、問題だ、として扱うコミュニケーションを政府やメディアが行うのは許せない。誰もが自分の体に尊厳を持てるよう、肥満に対するネガティブな扱いは、社会的に禁止すべきだ」というキャンペーンをやってたりすることです。「好きなこと」の項目でも書きましたが、イギリスはとにかく、一人一人が自由に生きる、同調圧力や社会的なプレッシャーをかけられたくない、という風潮が強いです。その辺りが、「肥満を社会問題として扱うこと」へのこうした反応にも現れているように感じらえます。日本では「周りから変に見られたら恥ずかしい」という感覚が、個人の行動に大きな影響力を持ちますが、それとは大きく違うドライブで動いている社会だ、ということですね。なので、「個人が自制する」アプローチの働きかけは、肥満への対策にならないのだと思います。

 

と、いうわけで、ロンドン生活で残念なこと8つでした。総じて、一人ひとりが自由に生きていることの裏返し、という面が多いように思います。日本の場合は、全てが秩序立っていて、安心できるのですが、その一方で、「こうしないといけない」というソーシャルプレッシャーが強くて、息苦しさにつながってると思います。一方、ロンドンの場合、そういうプレッシャーから自由であることの代償として、ばらつきが大きくて、きちっとしてない部分が社会のそこかしこに現れてるのでしょう。

トータルで見ると、残念な面もあるものの、楽しかったなあ、というのが妻と私の正直な感想です。人種差別を意識することもほとんどなく、また、犯罪やテロなどの危険を感じることも幸いありませんでしたし。私たちが住んでいたエリアは、日本人に人気のエリアではありませんでしたが、安全で、良い隣人にも恵まれて、楽しく過ごせたのは、非常に良かったです。

2件のコメント

  1. 現在フランス住で、ロンドンへの移住を考えています。フランスに共通する事が多くあって(特に交通機関や、自由な国民性、長所も短所も^^;) 興味深く読ませていただきました。
    言葉を選ばず言えば、フランスの”ガサツさ”は欧州の中で突出していると思いきや、イギリスも負けていなそうですね(笑) 仏には丸5年居るのですが、やはり長くなるほど良くないところも見えはじめてしまうのが常ながら、またその恩恵(裏返し部分)に肖っているのも事実です。
    どこに居てもきっと自分次第なんだろうなと思いながらも、心機一転住む場所を変えてみたい、と模索する今日この頃です。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

Katsuhiko Yoshikawa をもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む